『遠近法を用いた神社仏閣の描き方』アクリル画の基礎を分かり易く解説いたします

プロフィール

37年間勤めたホテル会社を定年退職

したことを機に、片手間であった

絵画制作を本格的に再開。

小学生の頃メインであった水彩画から

現在はアクリル絵の具を用いた作品に

注力中。ホテルマンとして培った

「癒し空間の提供」 の感性を作品中に

盛り込むべく鋭意制作活動中。

今回の解説内容です

第1章　「さまざまな遠近法」を覚えましょう！

第2章　「下絵」を作りましょう！

第3章「着色とディテール」～色鉛筆を使った

混合技法！

以上を知識としてお持ちになり

制作に取り組んでいただけると

更に素晴らしい作品につながると

思います。

第1章　さまざまな遠近法を覚えましょう！

さっそく作品の表現に深みを持たせる

遠近法について解説していきます。

この遠近法には、線遠近法（透視図法）

空気遠近法、上下遠近法、色彩遠近法

などがありますが、この章では私が制作

のうえで多用している線遠近法と空気

遠近法について触れてみたいと思います。

『線遠近法について』

これは平行する2本の直線が、

遠くにある１点で消失していく

技法です。

1点透視法とも呼ばれています。

例えば、草原に通る1本の道や電車

の線路などを描く際、遠くへ行くほど

幅が狭くなり、遥か先で消失(消失点)

していく描き方になります。

イチョウ並木などを描く場合は、沿道

に立っている並木も道と同様に遠くに

行くにつれて段々小さくなっていきます。

消失点は、構図によって1点に限らず

2点、3点とあり、2点透視法、3点透視

法と呼ばれ、描く対象物によっては

こういった技法で描くことでぐっと

遠近感が増していきます。

（上記を参照）

『空気遠近法について』

遠景になるにつれて、対象物にだんだん

青味がかかって、空の色調へ溶け

込んでいくように見えます。

また、輪郭線は遠くに行くほど不明瞭に

なり、全体が霞んで見える技法です。

例えば対象物を山並みとした場合

少しずつ青味が増しながらそれらの

輪郭も不明瞭になっていきます。

近くにある樹木、手前の山並み（近景）

は色濃く明瞭に描き、遠くにいく

につれて、色の彩度を落として

いきます。

この空気遠近法は添付の自作『飛翔』

で描いた遠くの山並みを参照ください。

次の第2章では、今回主にイラストなど

に使う細いペンを用いて神社の下絵を

描いていこうかと思います。

第3章では、いつものように下絵ができた

ところから塗り絵感覚で着色とディテール

描写へと進めていきますので

ぜひ楽しんでください。

自作　『飛翔』　2023年作　アクリル画　F4サイズ

自作　空気遠近法の練習画

第2章　「下絵」を作りましょう！

第２章では、すでにジェッソ（地塗剤）

を塗ったF4というサイズのキャンバスに

下絵を描いていきます。

今回使う「下絵」ですが、私が本年の

初詣で撮影した「湯島天満宮」の写真

です。

塗り絵感覚で楽しんでくださいね。

まず、下絵のPDFファイルをダウンロード

してください。

※下の画像内のボタンから、ダウンロードを開始

ダウンロードがうまくいかない方

面倒な方は、練習用下絵を真似て

ご自身でキャンバス、スケッチブック等

へ直接描いても簡単かと思います。

ダウンロードして印刷して頂くと4枚に

わたっていますが、これらを切り貼りして

頂くとF4サイズに合う下絵が

出来上がります。

次に、カーボン紙（咋今あまり使われなく

なりましたが）

を用いてプリントアウトした下絵を

キャンバスに転写していきます。

咋今、カーボン紙は事務用品で

なかなか使用されていませんので

ネットでの購入が簡単です。

このカーボン紙を、下地キャンバス

と下絵の間に挟んで、下絵の主要な

線だけで大丈夫ですので、なぞり

ながら下絵を転写をしてみましょう。

塗り絵の太線を作るイメージです。

赤ボールペンなどを使うと、

なぞり終えたところが判って作業が

し易いです。

それでは、冒頭の動画で下絵づくりを

解説していますので、こちらもご覧く

ださい。

Let‘s have a break!

私がホテルマンとしてスタートした

ホテルは、今は閉館となりましたが

東銀座の歌舞伎座と新橋演舞場に近

いところにありました。

昭和３５年オープンで、立地の良さ

から、歌舞伎役者さん、俳優の方々

銀座の高級クラブのママなど日々昼夜

を問わず賑わっていました。

残念ながら閉館となりましたが

今でも懐かしい思い出が走馬燈

のごとく蘇ってきます。

その中でも、ぞっとする思い出の

一つです。

どの業界でもそうですが「業界用語」

というものがありますよね。

ホテルでは、特に宿泊予約において

予約が入っているのに、宿泊当日に

お客様が来館しないことを

「NO　SHOW」といい

逆に、お客様はご予約があるつもりで

到着したのですが、ご予約が見当たら

ないことを「GO　SHOW」と言って

いました。

「NO　SHOW」の場合は販売予定の

部屋が余ってしまうことになり、

「GO　SHOW」の場合、当日に空室

があれば問題ないのですが、満室日に

この「GO　SHOW」がおきますと

非常に困ったことになります。

お客様、ホテルいずれか何らかの

手違いでおこりますが、満室でご用意

できるお部屋がない場合は、丁重に

お詫びのうえ、他の格上ホテルを

ホテル側が手配して対応します。

もちろん上位クラスの部屋で

すから宿泊費の差額や移動に伴う

交通費はこちらのホテルが負担します。

さて、とある日、この「GO　SHOW」

が宴会部門でおこったのです！

当日はご宴会の予定が1件も無いはず

なのに、お客様がぞろぞろと50人ほど

玄関から宴会ロビーに入ってきました。

宴会スタッフの誰もが、当然近隣の

ホテルと間違って来館していると思い

ましたー。

が、お客様がお持ちの「案内状」は

間違いなく当ホテルの宴会場での開催

内容でした。

ここからが大変なことになり、宴会

スタッフ以外も総動員して、テーブル

椅子を運んでパーティー会場を作り

調理スタッフはあらゆる食材を冷蔵庫

からかき集め、手違いへの怒りを押し

殺してお料理の用意をはじめました。

宴会場も空いていた事、出勤の宴会

スタッフは閑散日で少なかったです

が何とか無事に終宴となりました。

その後、ホテルに入っている予約日は

ちょうど一週間後である事が判りま

した。

担当者は上長から大変なお叱りを受け

ましたが、「お見積書」も一週間後の

日時でお客様へ提出されていました。

いずれにしろ幹事様と日時の確認が

不十分であったことは確かですね。

未だに、ぞっとする出来事です。

第３章　着色とディテール編～色鉛筆を使った混合技法！

（概ねベース塗りが終了）

それでは、着色（ベース塗り）と

ディテール(細部)の描写を行っていき

ます。

まず、空の部分ですが、使う絵の具は

「コバルトブルー」と「白」を用いて

いきます。これを混合して空の水色を

つくったら、大きめの平筆で空の部分に

伸ばすように塗っていってください。

空の上部は「コバルトブルー」を多めに

青味を濃くしてグラデーションをつけて

いきます。

青色の濃淡の境目を✖を描くように

ファン筆でならしていきましょう。

更にスポンジで軽く叩いて筆跡を消して

いきます。

今回は雲の描き方について

触れませんが、皆さんがお好きなよう

に描き足してください。

次に、神社の屋根の部分ですが

「コバルトターコイズ」という少し

緑が入った色を使いたいと思います。

こちらも「白」を混ぜて薄い感じで

塗っていきましょう。

下絵の人物は、着ている服装が

紺系統が多いので、そのまま描いて

しまうと作品全体が暗い感じに

なってしまうので、この部分は皆さん

のお好きな色で服装を描いてみたら

楽しいと思います。

全体的に水分が多い薄めの色で

下絵の線が見えるくらいに塗って

いきましょう。

さて、画面がしっかりと乾いたら

ここから「色鉛筆」(できれば油性

のもの)を使っていきたいと思います。

水彩画で一部に色鉛筆を用いる

画家さんがいます。

この混合技法を使って所々のディテールを

描いてみます。

頭髪の質感だとか、着ているジャケット

の部分的な明暗などのグラデーションを

つけていきましょう。

今回の神社仏閣のようなものは、細かな

線の部分が多いので、特に直線部分など

絵の具だとマスキングテープなどを

使うのですが、色鉛筆と定規で直線を

描いたり、サインペンを併用すると

描き易くなると思います。

ぜひお試しください。

エピローグ

私は、定年退職したことを機に、

改めて大好きな絵画に時間を

かけられるようになりました。

そんな中で、近代絵の具である

アクリル絵の具を用いた素晴らしい

作品に出会うことができました。

美術大学出身の若いプロ画家の

作品に出会い、体の中にくすぶって

いた火種が再燃し始め、現在は水彩画

からアクリル画に軸足を移してみました。

アクリル画と水彩画、どちらも魅力的な

表現方法があります。

その表現の豊かさを活かした制作活動に

今後も挑戦していきたいと思っています。

皆さんが、更に、または新たに絵画を

楽しんでいくうえで、この

「絵画工房　HIKOのスッケチブック」

を一助にしていただければ大変嬉しいです。

それでは、またの機会にお会いしましょう。

絵画工房　HIKO　　吉田　明彦

湯島天満宮　「　願い　」　　　

２０２４年作　アクリル画　F4